2011年6月11日土曜日

世界一大きな問題のシンプルな解き方(Out of Poverty)出版の経緯

去年の4月、一人の男がD-labの壇上に立っていた。彼の名前はPaul Polak。ずばり、ぼくがこの業界で最も尊敬する人の一人である。途上国開発の分野でJeffry SuchsやStuart HartやC. K. Prahaladの名前を知っていても、彼の名前を知っている人はあまりいないだろう。Paul Polak氏の著書"Out of poverty"はMITのD-labで教科書として使われており、ぼくはこの本を何回読み直したかわからない。Paulから日本語版が未だ出版されていないという話を聞き、槌屋詩野さんを通じて英治出版さんに出版の話を持ち込んだのが去年のことだった。

この数年、日本では多くの途上国開発に関するビジネス書が翻訳、出版され、"BOP ビジネス"はさまざまな解釈をされてきた。僕自身、去年何回か日本に帰ったときに、多くのイベントに参加させていただいたが、そこで大きな違和感を感じた。それはイベントに来られた方々の多様性の少なさだった。日本で会社に勤めるいわゆる”文系”の人たち中心のビジネス主導で進むBOPブームに大きな違和感を感じた。そこで仲間たちと一緒に、デザイナーやエンジニアを巻き込んだ適正技術を用いたアプローチを日本で広げようと思い、「大学」x「技術」x「BOP」を行ったのが去年の3月のことだった。

一方で日本で何度かお会いした槌屋さんが自身のブログに技術主導に警報を鳴らすような記事を書いた。一瞬自分に対する挑戦かと思ったものの、よく読んでみると結局はぼくと同じような危機感を持っていたのだ。

デザインや技術、あるいはそのビジネスモデルはキャッチーであるため、飛びつきやすい。一方で現地の泥臭い、草の根レベルでの活動が伝わりづらいものばかりなのだ。途上国での活動で一番大切なのはこの部分であるにも関わらず、だ。ぼくが危機感を感じていたのは、現地の草の根レベルでの対話が、大事だといわれながらも無視され、BOPビジネスが議論されていたからだ。実際に途上国で泥にまみれながら、現地の人と対話を繰り返してきた実践者が少ないのも事実だ。ぼくが、この本を日本で出版したかった理由は、ぼくが大のPaul Polakファンであるのはもちろん、この本が一番大事な対話の部分を赤裸々に紹介している実用書であるからだ。

Paul Polakは元々は精神科医であったが、エンジニアでもあり、デザイナーでもあり、社会起業家でもあるといえる。しかし、エンジニアリングもデザインもビジネスもすべてツールでしかない。彼は手元のツールを駆使して、ただ目の前の人を助けようとシンプルに考え、灌漑装置を作り、現地に設置し、利用者の収入を向上させ、貧困層から脱却させた。貧困問題解決には、深い専門性はもちろん、幅広いスキルセットも必要となってくる。この専門性にとらわれない問題解決のプロセスにも目を向けてほしい。


専門分野に関わらず、途上国の人々を本気で助けようと思っているすべての人に読んでいただきたい一冊です。




最後にこの本の出版に際して、英治出版の下田さん、高野さんには本書の序文を書かせていただく機会をいただき、とても感謝しております。そして槌屋さんには、英治出版を推薦していただき、出版までこぎ着けることができました。何度か行ったskypeミーティングではとても有意義な議論をすることができました。これからもどうかよろしくお願いいたします。

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