2010年10月14日木曜日
頭脳の海外流出?
先日MITの日本人会が日本テレビの報道番組「バンキシャ」の取材を受け、何人かがインタビューを受けました。ノーベル化学賞を受賞された根岸さんが「若者よ、海外に出よ」とおっしゃったことから、日本テレビのバンキシャが日本の頭脳が海外に流出しているといったようなストーリーを想定し、取材依頼がMITに来たようです。
インタビューではアメリカと日本の研究環境ではどちらがいいかという質問を受け、その理由を聞かれました。その中で同じ博士の学生である小野とぼくの発言の一部が番組の中で放送されたようです。いままで、ここやここで取材はたくさんうけたことはありますが、下っ端だったのでことごとくカットされることが多かったのでちょっとうれしかったです。まったく宣伝はしませんでしたが、たまたまみた知り合いからメールをもらったり、fuRoのブログで紹介されていたり、今日たまたまラボであったD社の関係者の方がぼくの発言を知っていたりしました。
ただ、やはり短い時間の枠の中での放送だったので、発言の一部しか放送されず、誤解を招くような発言だけが放送されました。ここで何を話したか書いておこうと思います。
1) MITの多くが学生はアドバイザーから授業料と給料をもらっている。
2) 自分の場合は、自分でグラントプロポーザルを書いたために、研究費にめぐまれている。
3) 自分の場合、年間3000万円から4000万円自由に使えるお金がある。
4) ただ、これは他の研究にも使われることがあるため、実際には全部自分で使うことはない。
5) さらに、自分の場合は大学の他の期間でD-labでインストラクターをやったり、そのプロジェクトのためにお金を集めたりしている。こんな自由度は日本ではあまりないと思う。
というような内容だったと思います。それが赤い字のところだけ放送されてしまったので、アメリカの研究者はみんな3000万円程度の研究費を使えると受け取った方もいるかと思いますが、おそらくぼくはラッキーな部類です。
メディアの報道はいろいろと批判もあるかと思いますが、今回の報道は個人的にはそこまで偏った編集ではなかったと思います。メディアは複雑かつ大量の情報量をお茶の間にわかりやすく届けることが必要とされるため、ある程度偏った編集をすることも多いかと思います。程度にもよりますがそれはまったく健全なことで、(例えば、アメリカではニューヨークタイムズがリベラルに偏っているのに対し、ワシントンタイムズは保守的、おそらくそのバランスが大切)視聴者が十分なリテラシーを備えていることが重要なんだと再認識しました。
ぼく個人としては、実は海外に学位留学することを積極的には勧めていません。自分は博士2年半までを日本で過ごし,その後MITで博士過程を5年間過ごしたので、一分野の例ではありますが両方の環境を経験し、ある程度は理解しているつもりです。純粋に研究者としての環境は金銭面でアメリカ有利は変わりませんが、成果に関してはそこまで差があるとは思っていません。むしろ、日本で博士をとったほうが早く学生を終えることができるので、日本の方が有利かもしれません。留学の付加価値は、英語が上達することであったり、異文化とふれあう機会であったり、留学先で出会う人とのネットワークであったり、プロジェクトであったり、研究以外のところの方が実は大きいかと思います。そして、研究以外の付加価値こそ今後の日本が必要とするものであるとおっしゃる方々もいるようです。ただ、留学にはリスクを伴うのも事実です。
なので、ぼくは黒川先生のおっしゃる「休学のススメ」のように、まずは休学して一年間どこか海外に短期留学なり、放浪の旅なりをして、日本にとどまるかあるいは留学するのかを自分で決めるべきと思っています。
何はともあれ、テレビ取材は滅多にないことですが、今度は自分の成果で取材されたいものです。。。
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